【骨伝導の仕組み完全ガイド】なぜ耳が疲れないのか?:メリットとデメリット、安全性を解説!
2024.08.02更新
- 骨伝導の仕組みを簡単に教えて!
- 骨伝導イヤホンって危険なの?安全性は大丈夫?
- 子どもの面倒を見ながら音楽が聴けるイヤホンが欲しい
多くの人が音楽を楽しむ際にイヤホンやヘッドホンを使用していますが、骨伝導イヤホンを活用している人はまだ少ないです。しかし、耳をふさがない骨伝導イヤホンは育児中の人や装着感を求める人にとって理想的なアイテムです。
僕は「Shokz OPENCOMM」という骨伝導イヤホンを2021年から3年以上愛用しています。このイヤホンは耳をふさがないため、長時間つけていても快適で、マイク性能も優秀です。
今回のテーマは「骨伝導の基本と安全性について」です
この記事では、「骨伝導」の基礎知識と骨伝導イヤホンのメリット・デメリットをわかりやすく説明します。この記事を読めば、骨伝導の仕組みや安全性を理解し、骨伝導イヤホン選びの参考にになるでしょう。
骨伝導イヤホンは「ながら聴き」に最適なイヤホンです。育児中に音楽を聴いたり、オーディオブックを活用した読書がおすすめ。耳をふさがない快適なオーディオ体験を楽しみましょう。
目次を使って、気になる所から読みましょう!
骨伝導の基礎知識|音が聞こえる仕組みとは?
骨伝導の基礎知識について、以下3つに大別して解説します。
- 骨伝導の仕組み
- 音の伝わり方
- 空気伝導との違い
「骨を通して音が聞こえる仕組み」が骨伝導
骨伝導とは?
骨伝導は、耳を使わないでも音が聞こえる仕組みです。音を振動に変え、骨を通じて内耳に直接音を伝えられます。音の振動は頭蓋骨(ずがいこつ)を通じ、内耳の有毛細胞を刺激して音として認識させる仕組みです。
この技術は、耳をふさがずに音を聴けるため、音楽を聴きながらスポーツしたい人にとって非常に有益です。耳をふさがない骨伝導イヤホンでは、周囲の環境音を認識しながら音楽や通話を楽しむことが可能です。つまり、安全かつ快適なオーディオ体験を提供します。加えて、2020年の緊急事態宣言のときにリモートワークが推奨されたことで、ZOOMなどのオンライン会議に適したマイク付き骨伝導イヤホンも人気を集めています。
私たちに密着している「骨伝導」
骨伝導は人間がもともと持っている「音を聞く」ための方法の一つです。骨伝導が関係する音の具体例を挙げます。
- 自分の録音した声といつも耳で聴く声が違う
- 食べ物を噛んだ音
- 歩行時の足音
- 歯を磨くときのシャカシャカ音
- ベートーヴェンの骨伝導にまつわる逸話
- クラシック音楽家のルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(※)は、耳が聞こえない状態でも作曲をしたことで有名です。彼が音を感じ取るために利用したのが骨伝導です。
ピアノの音を感じるために、棒の一端を自分の歯に噛み、もう一端をピアノに固定しました。この方法により、音の振動が棒を通じて顎の骨から内耳に直接伝わり、ベートーヴェンは骨伝導によって音楽を聴くことができました。
※ベートーヴェン:ドイツ生まれのクラシック音楽史上最も重要な作曲家の一人。有名作品として、交響曲第5番「運命」や交響曲「第9番ニ短調作品125」第4楽章(別名:歓喜の歌)があります。
骨伝導の最新技術への活用事例
骨伝導は普通の聴覚経路を使用せず、骨を通じて音を伝えます。聴覚経路を使用しないため、聴覚に障害がある人々にとって補聴技術として非常に有用です。
20世紀後半に骨伝導を利用した補聴器が開発され、現在では小型で装着性の優れた補聴器が各メーカーから発売されています。このように骨伝導を活用したデバイスは医療にも活用されています。
建設現場や火災現場、工場など危険な環境において、骨伝導イヤホンは力を発揮します。これらの環境では、周囲の環境音に注意しながら作業しないと命の危険につながります。骨伝導イヤホンならば、周囲の環境音にも注意しながら、指示や通話が可能です。イヤホンで耳がふさがれないことにより、作業員の安全性が大幅に向上し、事故のリスクを低減することに役立っています。
音の伝わり方
私たちが感じている音の感じ方には次の3つがあります。
- 骨伝導
- 空気伝導
- 軟骨伝導
それぞれのメリットやデメリットは以下のとおりです。
伝導方式 | 音の聞こえ方 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
骨伝導 | 頭蓋骨(こめかみ部分)を振動させて内耳に直接音を伝える | 耳をふさがないため、耳の疲労や感染症リスクを軽減できる | 骨伝導の安全性に不安を覚える人がいる |
空気伝導 | 外耳道を通じて鼓膜を振動させ、内耳で音を感知する | クリアな音質で音を聞けるので、音に集中できる | 環境や音量に配慮した使い方を求められる |
軟骨伝導 | 耳の軟骨を振動させて内耳に直接音を伝える | 骨伝導よりも装着性や聞こえやすさに優れている | 軟骨伝導を活用したデバイスが少ない |
骨伝導では、音が耳の穴や鼓膜を通らず、蝸牛(かぎゅう※)へと伝わります。音は耳周りにある骨をメインに振動させ、内耳の聴覚器官である蝸牛に到達します。振動が骨を介して内耳に伝えられ、聴覚神経に変換されて音として認識されます。
※ 蝸牛(かぎゅう)とは、耳にある聴覚器官のこと。渦巻き状の管で、形状がカタツムリに似ています。
骨伝導は一般に中高音のほうが聞こえやすく、低音ほど聞こえづらい傾向があります。低音域は波長が長いため、頭蓋骨を透過しにくく、効率的に伝わりにくいのです。そのため、鼓膜で音楽を聞くような空気伝導方式のクリア感はありません。しかし、メーカーの企業努力の結果、性能は日々改善されています。今では、低音域の音質や音漏れ、こめかみ部分の振動問題は解消されてきました。
空気伝導との違い
空気伝導は、音波が外耳から鼓膜に到達し、振動を内耳に伝えることで音として認識されます。しかし、骨伝導は鼓膜を使わずに、耳周りにある骨を直接振動させて内耳の聴覚器官に音を伝えています。骨伝導では鼓膜が損傷していても、音を感じることが可能です。
空気伝導は耳をふさぐため、周囲の環境音が遮断されます。1つの音に集中したいときに便利です。一方で骨伝導は、周囲の環境音が遮断されにくいため、外の音も取り入れたいときに便利です。ランニングであれば、車の音や周りの人々の声など、外部の音にも注意を払えるので骨伝導が向いています。
新しい聞こえ方「軟骨伝導」
軟骨伝導とは、耳の軟骨を使って音が伝わるしくみです。耳をふさがずに音を聴けることは骨伝導と一緒ですが、その違いは振動子(※)を当てるポイントです。骨伝導はこめかみ部分に振動子をあてるのに対して、軟骨伝導は耳の穴付近の軟骨に振動子をあてます。まるで、耳の近くにスピーカーがある感覚で音を感じ取れます。
※ 振動子とは、電気信号を振動に変え、鼓膜を刺激して音を伝えるためのイヤホンの部品です
軟骨伝導は2004年に発見された比較的新しい技術です。そのため、軟骨伝導を活用したイヤホンはあまり販売されていないのが現状です。しかし、こめかみ部分の振動が気になる骨伝導イヤホン使用者にとって、新しい選択肢になりえます。
» 軟骨伝導とは?
骨伝導のメリット
骨伝導のメリットは以下のとおりです。
- 耳が疲れにくい
- 周囲の音が聴こえる
- イヤホンを落としにくい
耳が疲れにくい
耳が疲れにくいのは、骨伝導の大きなメリットです。耳をふさがず、圧迫感が少ないため、快適に音楽や通話を楽しめます。長時間の使用でも耳の不快感は少ないです。普通のイヤホンやヘッドホンで感じられる耳の疲れを心配する必要がありません。直接的な音圧がないため、聴覚そのものへの疲労も少ない利点があります。
外耳炎や中耳炎などの耳のトラブルも避けやすいです。耳の快適さや安全性を重視する方には、骨伝導がおすすめです。
周囲の音が聴こえる
骨伝導のメリットには、周囲の音が聴こえることも挙げられます。耳をふさがないで音楽を楽しめるので、安全性が高いです。ウォーキングやランニングなどをする際、車の音や他の人の声など、周りの環境音に気をつけながら音楽を聴けます。
仕事中や公共の場所で使用する際にも、周囲の人とのコミュニケーションを妨げることなく音楽を楽しめます。社会的にも受け入れやすい選択肢です。緊急時の警告音や呼びかけにも即座に反応できるため、さまざまな状況に適応しています。
イヤホンを落としにくい
インナーイヤータイプの耳に挿すイヤホンに比べて、骨伝導イヤホンを使用中に落とす可能性は極めて低いです。その理由は、ネックバンド方式が主流ということにあります。ネックバンド方式は両耳にかけるタイプなので、ランニングなど身体を動かしている最中でもイヤホンが落ちることはありません。
音楽を聴かない時には首に掛けておけばいいので、ケースを持ち歩いたり、探す必要がないこともメリットです。
骨伝導のデメリット
骨伝導のデメリットは以下のとおりです。
- 音質が劣る傾向がある
- 音漏れがある
- 音量を上げると振動子の振動が大きくなる
音質が劣る傾向がある
骨伝導技術は、音を耳ではなく骨を通して直接内耳に届けるため音質が劣る傾向があります。なぜなら、鼓膜に直接音が伝わらないため、音のクリアさに欠けてしまいます。そのため、音の解像度が全体的に低下しがちなのが懸念点です。特に低音の聞こえ方に問題があるケースが多いです。例えば、音程の低い男性の声や音楽を聴く際のベースやドラム音などが十分に聞こえないことがあります。
音質を重視する人は、骨伝導以外のイヤホンを選ぶのがおすすめです。ワイヤレスイヤホンや有線のイヤホンも選択肢に入れましょう。
音漏れがある
骨伝導には音漏れのデメリットがあります。骨を通じて音を伝える独特の構造なので、音漏れが起こりやすいのが特徴です。大きな音量で使用すると、音漏れの可能性は高まります。
公共の場所で骨伝導ヘッドホンを使用する場合、音が周囲の人に聞こえてしまうため注意が必要です。例えば、電車の中など周囲への音漏れに配慮が必要な場合は特に注意しましょう。骨伝導イヤホンの使用を控えるか、密閉型のイヤホンを選ぶことが大切です。密閉型のイヤホンでも音漏れを確実に防ぐ方法はないです。しかし、骨伝導よりは音漏れリスクが低いので、利用環境によっては骨伝導以外のほうがおすすめです。
音量を上げると振動子の振動が大きくなる
骨伝導はこめかみ部分にあてた振動子の振動によって、音を耳に届けます。音量を大きくするほど、振動子の振動が強くなるために注意が必要です。骨伝導イヤホン使用時のこの振動が気になるという人も多く、僕も気になっています。
以下の3つの解決策があります。
- 振動子のあてる場所をずらしてみる
- 性能の良い骨伝導イヤホンを使用する
- 骨伝導イヤホンと耳栓を併用する
しかし、「3.骨伝導イヤホンと耳栓の併用」では「周囲の音が聞こえる」という骨伝導イヤホンのメリットを消してしまいます。例えば、電車内など周囲の環境に気を配る必要がない場合や騒音環境下などの一時的な利用に留めるべきです。
» 骨伝導イヤホンのデメリット
骨伝導が安全な4つの理由
骨伝導の安全性が高いとされる理由は以下のとおりです。
- 耳の感染症や炎症リスクを軽減できる
- 長時間使用していても疲れない
- 大音量で使用した場合の鼓膜への負担を減らせる
- 周囲の音が聞こえるので安全に注意できる
このような利点があるにもかかわらず、骨伝導という聞きなれない言葉に不安を覚える方は多いです。
しかし、冒頭で述べたように骨伝導は「人間がもともと持っている聞こえのしくみ」を活用したものなので安心してください。その証拠に、医療機関では「気導検査(※1)」「骨導検査(※2)」の両方を行って難聴かどうかを判断しています。骨伝導が健康に害を及ぼすのであれば、医療機関はこのような検査を行いません。
※1 気導検査:ヘッドホンに音を流して、被験者の聴力を測定する一般的な聴力検査
※2 骨導検査:耳の後ろの乳突部や額に振動器をあてて、直接骨を通じて内耳の蝸牛へ音を伝えて被験者の聴力を測定する聴力検査
ヘッドフォンから聞こえてくる音がどの程度聞こえているかを測定する「気導検査」と、骨から直接、内耳へ振動を伝えて聞こえる「骨導検査」を行います。
レイクタウン たけのこ耳鼻咽喉科ホームページ(https://www.takenoko-ent.jp/audiometry/)
この検査により、鼓膜や中耳に異常があり音の伝導障害が起きているのか(伝音難聴)、もしくは聞こえの神経や内耳に異常が生じているのか(感音難聴)を診断します。
125Hz(低い音)から8000Hz(高い音)まで7段階に分けて細かく検査していきます。
耳の感染症や炎症リスクを軽減できる
骨伝導イヤホンは、オープンイヤーイヤホンです。そのため、イヤホンに付着した細菌などが耳の中や鼓膜で繁殖する可能性が低くなります。これにより、耳の感染症や炎症のリスクを軽減できます。僕が骨伝導イヤホンを使用するようになったのはこの理由からです。
長時間使用していても疲れない
インナーイヤータイプやカナル型のイヤホンを長時間装着していると、耳に閉塞感や疲れを感じることがあります。また、長時間イヤホンを装着することにより、上記のような感染リスクや難聴リスクが高まります。その点、骨伝導だとイヤホンを耳に入れないので、長時間使用していても疲れません。
大音量で使用した場合の鼓膜への負担を減らせる
長時間・大音量で音を聞くと難聴リスクが飛躍的に高まってしまいます。特にイヤホンを常に使用している若い世代の「イヤホン難聴」を厚生労働省が問題視しています。骨伝導で大音量を聴く場合、振動子の振動も比例して大きくなるため、振動による不快感を感じる場合が多いです。このことは「大音量で音を聴く」ことに一定のリミットを与え、あなたの聴力を守る効果があります。
周囲の音が聞こえるので安全に注意できる
骨伝導イヤホンの最大のメリットは「耳をふさがないため、周囲の音が聞こえる」ことです。それは以下のようなシチュエーションで効果的です。
- 安全や交通状況を確認しながらランニングする
- 洗い物など家事の合間に、子どもの異変に気づける
- 通勤や通学中に、周囲の環境に注意できる
周囲の音が聞こえることは、事故や事件からあなたやあなたの大切な人を守ることに役立ちます。
正しい知識を持って、耳の安全を守ろう
上記のように安全性は高めと言えます。しかし、鼓膜を通さない音の伝え方であるため、頭痛になりやすいリスクは避けられません。慢性的に頭痛の症状がある場合は、医師と相談したうえで使用するのをおすすめします。使用中に不快感や痛みを感じた場合は直ちに使用を中止しましょう。
骨伝導イヤホンは、普通のイヤホンに比べて耳に優しいと言われています。とはいえ、長時間・大音量での使用は控えましょう。イヤホン難聴のリスクを避け、耳の健康を守るためには、以下のような使い方がおすすめです。
- 長時間の連続使用は避け、1時間聴いたら5分の休憩を挟む
- イヤホンの使用は1日に2時間以内に留める
- 音量は最大音量の60%以下に保つ
- 耳に違和感を感じたら、すぐに使用を中止する
- 外部の騒音が多い環境では、「ノイズキャンセリング機能」がついたイヤホンを使用する
正しい知識を持って適切に使用すれば、骨伝導イヤホンは耳にやさしいイヤホンです。日常生活で聴く体験を楽しみやすいので、状況に合わせて使用しましょう。
参考サイト:
厚生労働省ホームページ
Shokzホームページ(骨伝導イヤホンメーカー)
レイクタウンたけのこ耳鼻咽喉科ホームページ
きこえのお助け隊ホームページ(補聴器販売店)
骨伝導技術が使われている製品と今後の進化
この章では以下の2点について解説します。
- 骨伝導技術が使われる製品
- 骨伝導技術の進化と新たな応用分野
イヤホン以外にも骨伝導技術は大活躍!
骨伝導技術が使われている製品は以下のとおりです。
- 骨伝導イヤホン
- 骨伝導ヘッドセット
- 骨伝導補聴器
- 軍事用通信機器
- 睡眠改善デバイス
- 安全対策用ヘルメット
水中通信装置や軍事用通信機器といった特殊な環境でのコミュニケーションにも活用されています。安全対策用ヘルメットにも組み込まれ、各場面で重要な情報を伝える手段として信頼性が高いです。日常生活でも睡眠改善デバイスやバイク用ヘルメットの通信システムなど、幅広い製品が存在しています。
骨伝導はイヤホンのイメージが強いですが、さまざまな製品に応用して使われています。生活をより便利で快適にするために役立っており、近年では不可欠な存在です。骨伝導製品は汗や水に強く、装着していても違和感が少ないため、ものを落としやすい年齢層でも安心して使える製品です。
日本の補聴器事情と骨伝導
今後、確実に需要が増えるのは、骨伝導補聴器です。聴覚に障害を持つ人々にとって、よりクリアな音を提供できます。日本では以下の理由から、海外に比べて補聴器の普及が進んでいません。
補聴器の普及が日本で進まない理由
- 補聴器に対するネガティブイメージ
- 経済的な負担
- 難聴に対する意識不足
- 専門医や補聴器販売店の不足
【各国の難聴者に対する補聴器の所有率】
イギリス | 42.4% |
ドイツ | 34.9% |
フランス | 34.1% |
アメリカ | 30.2% |
日本 | 15.2% |
老化が進むと目が見えにくくなるのと同様に、耳の聞こえも悪くなります。本来であれば、補聴器の専門家と一緒に自分に合った補聴器を選ぶ必要があります。しかし、上記の理由により補聴器の普及が進んでいないのが現状です。
補聴器を活用して、会話が聞き取りやすくなると以下のメリットがあります。
- 家族とのコミュニケーションが改善される
- 外出の機会が増える
- 必要以上に大きな声で話さなくて済む
- テレビの音量を下げても聞こえる
人と会話することは脳の活性化に効果的です。特に、認知症の予防やストレス軽減、生活全体の質(QOL)の向上に繋がります。
特に、骨伝導製品は装着していても違和感が少ないほか、ものを落としやすい年齢層でも安心して使える製品です。最近はボタンで操作するモデルも販売され、高齢者に使いやすい製品が増えてきています。
骨伝導技術の進化と新たな応用分野
骨伝導技術が進化すると以下のような分野にも応用できると考えられます。
- 軍事用途でのコミュニケーションツール
- 危険な環境での通信手段
- 潜水や高速移動中などの環境下での使用
- 健康モニタリングシステムの開発
- VR(仮想空間)やAR体験(※)での活用
※AR体験とは、現実の空間にデジタル情報を重ね合わせることで、現実世界を拡張することです。スマホやQRコード読み取り機能を活用したゲーム(ポケモンGO)やショッピング(IKEA Place)へと展開されています。
特殊な環境下では、部分的に使用されているのが現状です。しかし、技術の発展により同じ分野でもより特殊な状況下でも使用できるよう開発が進められています。近年の注目分野としては、VRやAR体験のリアリティの向上が挙げられるでしょう。
医療分野でも、骨伝導センサーを用いた健康モニタリングシステムの開発が進み、さらなる質の向上が期待されています。骨伝導技術がもつ多くのメリットが、私たちの生活をより豊かにする可能性が高いです。
骨伝導補聴器とは
骨伝導補聴器は、骨を振動させることで音を内耳に伝える補聴器です。骨伝導補聴器を詳しく知るために、以下の項目に沿って解説します。
- 骨伝導補聴器の役割
- 骨伝導補聴器の使用上のポイント
- 骨伝導補聴器の音質が合う人・合わない人
- 骨伝導補聴器選びのポイント
骨伝導補聴器の役割
骨伝導補聴器は、骨を通じて音を内耳に伝える補聴器です。外耳道や中耳に問題がある場合、一般的な補聴器が使えないことがありますが、骨伝導補聴器なら耳の状態に関係なく使用できます。
外耳道を塞がずに使えるので、周囲の騒音が少ない環境では音がクリアに聞こえます。聴覚の自然な感覚を保ちやすく、耳が疲れにくいのがメリットです。
耳鳴りの緩和効果も期待できます。屋外や運動中でも使用が容易で、高音質な音声を提供するため、多くの状況で便利です。
骨伝導補聴器の使用上のポイント
骨伝導補聴器を適切に使用するためには、押さえるべきポイントがあります。
- 正しい装着位置を確認する
- 装着前に耳周辺を清潔に保つ
- バッテリーの残量を定期的にチェックする
- 適切な音量に設定する
- 長時間の使用を避ける
- 使い始めは短時間から始める
- 定期的に使用感を見直す
- 耳に痛みや異常を感じたらすぐに使用を中止する
- メーカーの推奨するメンテナンスを行う
- 水に濡れないように注意する
- 高温多湿の場所を避けて保管する
- 専用ケースに入れて保管する
上記のポイントを守ることで、骨伝導補聴器をより効果的かつ安全に使用できます。
骨伝導補聴器の音質が合う人・合わない人
骨伝導補聴器の音質が合う人は、伝音性難聴や外耳、中耳に障害がある人です。骨伝導補聴器を使用すると、頭蓋骨を通して音を聞くことでクリアな音質を得られます。骨を通して音が伝わるため、耳を塞がずに使用できる点も魅力です。
機種によっては高音域がクリアに聞こえるため、高音域の聴力が低下している人にも適している場合もあります。周囲の音も同時に聞きたい人には便利です。
一方、骨伝導補聴器の音質が合わない人もいます。従来のイヤホンや補聴器に慣れている人は、骨を通して伝わる音質に違和感を感じるかもしれません。長時間使用すると、骨伝導による振動が不快に感じる人もいます。
頭部や顔面に骨伝導に適さない医療的な問題がある人には、使用が推奨されません。
骨伝導補聴器選びのポイント
骨伝導補聴器選びのポイントは以下のとおりです。
- 装着感とデザイン
- バッテリー寿命
- 防水・防汗性能
- メンテナンスのしやすさ
- 音質の試聴
- 価格帯と予算
- 保証期間やアフターサービス
- 操作性
上記をチェックし、自分に合った骨伝導補聴器を選びましょう。
骨伝導に関するよくある質問と答え
骨伝導に関するよくある質問にお答えします。
骨伝導はどんな仕組みですか?
骨伝導技術は、振動を頭蓋骨(ずがいこつ)を通じて直接内耳に伝え、聴覚を刺激することで音を聞くことができる技術です。
骨伝導イヤホンと通常のイヤホンとの主な違いは何ですか?
骨伝導イヤホンは鼓膜を介さずに音を内耳に伝えるので、耳をふさがずに使用でき、外の音も聞き取ることができます。耳をふさがないことは、状況を把握し安全性に注意するための重要なポイントです。
空気伝導や軟骨伝導との違いを教えてください
骨伝導 | 空気伝導 | 軟骨伝導 |
頭蓋骨を振動させて内耳に直接音を伝える | 外耳道を通って鼓膜を振動させ、その振動が内耳に伝わる | 耳の軟骨を振動させて内耳に直接音を伝える |
骨伝導イヤホンだと耳が疲れにくいとされる理由は何ですか?
イヤホンを耳に挿入しないので、耳への異物感や耳詰まり感がありません。また、ネックバンド方式ながら軽量(約30g)の製品が多く、イヤホンの装着感も抜群です。
骨伝導イヤホンの使用中に周囲の音は聞こえますか?
はい、骨伝導イヤホンは耳をふさがないため、周囲の音が聞こえます。スポーツや家事をしながら、安全に音楽や通話を楽しめます。
骨伝導イヤホンのデメリットを教えてください。
骨伝導のデメリットは以下の3つです。
- 音質が劣る
- 音漏れ問題
- 音量を上げたとき、こめかみの振動が大きくなること
骨伝導の安全性は大丈夫ですか?
はい、骨伝導は人間がもともと持っている聞こえ方のひとつです。骨伝導を活用した技術は安全で、医療機関での聴力検査にも使用されています。詳しく解説したこちらの内容をご覧ください。
骨伝導技術が使われている製品にはどのようなものがありますか?
- 骨伝導イヤホン
- 骨伝導ヘッドセット
- 骨伝導補聴器
- 軍事用通信機器
- 睡眠改善デバイス
- 安全対策用ヘルメット
耳をふさがないというのは大きなメリットです。周囲の環境音を聴きながら、スポーツや作業ができます。
また、高齢化社会により骨伝導補聴器の普及も進んでいくことでしょう。ネガティブに捉えられる補聴器ですが、認知症の予防やコミュニケーションに必要なツールです。デザイン性に優れた骨伝導イヤホンのような補聴器も生まれるかもしれません。
骨伝導イヤホンは水泳中に使える?
骨伝導イヤホンには、水泳中に使用できるモデルがあります。IPX8の防水性能があるものが水泳に適しています。海で使用する場合は、海水対応か確認してください。
水中専用の骨伝導イヤホンが市販されています。水中での使用を前提に設計されており、快適に音楽を楽しめます。イヤホンの寿命を長くするために、使用後はプールの塩素や海水の塩分を洗い流しましょう。
ただし防水性能が高くても、長時間の水中使用は避けるべきです。製品の劣化を早める可能性があります。適切な使用時間を守ることが重要です。
骨伝導イヤホンでハイレゾ音源は楽しめる?
骨伝導イヤホンでハイレゾ音源を楽しむことは難しいです。骨伝導イヤホンは骨を通じて音を伝えるため、音のディテールや高解像度の音質を完全に再現できないからです。
ハイレゾ音源が提供する細かい音のニュアンスや広がりを、骨伝導イヤホンが表現するのは技術的に限界があります。クラシック音楽やジャズなど、細かい音の差異が楽しみの一部となるジャンルでは、直接耳に音を伝えるイヤホンの方が最適です。
しかし、骨伝導イヤホンは周囲の音を聞きながら使用できるため、エクササイズやアウトドア活動などでは安全性が高いというメリットがあります。骨伝導イヤホンは耳を塞がないため、耳の健康を保つ点では優れています。
骨伝導イヤホンのバッテリー寿命は?
骨伝導イヤホンのバッテリー寿命は、約2~3年といわれています。バッテリー寿命を延ばすためには、適切な充電と保管が必要です。湿気を避けて保管し、使用しない場合はケースにしまいましょう。
以下のようなケースでは、バッテリー交換や買い替えをおすすめします。
- 雑音が聞こえる
- 音が途切れる
- 充電できない
- バッテリーの持ちが悪い
日常的に使用する際の連続使用時間も重要なポイントです。骨伝導イヤホンの連続使用時間はモデルによって異なりますが、一般的には約6〜8時間です。長時間の使用が可能なモデルもあり、使用目的に応じて選べます。
連続使用時間を延ばすためには、イヤホンを定期的に充電し、バッテリーを保護することが大切です。
骨伝導イヤホンの正しい装着方法は?
音質と快適さを最大限に引き出すためには、骨伝導イヤホンを正しく装着することが大切です。以下の手順で装着しましょう。
- イヤホンのバンド部分を頭の後ろに回す
- イヤホン部分は耳の上に配置する
- 骨にしっかりと密着させる
適切な位置を確認して、イヤホンがずれないように調整しましょう。正しく装着できていれば、走ったり動いたりしてもイヤホンが落ちにくくなります。髪の毛がイヤホンと頭の間に挟まらないように注意してください。髪の毛が挟まると音がうまく伝わらないことがあるからです。
装着後には音質や快適さを確認し、必要に応じて微調整します。自分に最適な位置を見つけることが大切です。正しい装着方法を守ることで、骨伝導イヤホンの性能を最大限に発揮できます。
まとめ|骨伝導は耳に優しく、ながら聴きに最適!
骨伝導技術は、振動を骨経由で直接内耳に伝えることで音が伝わる仕組みです。従来の空気伝導の方式と異なり、耳周りや鼓膜を通さずに音が届くため、耳が疲れにくいです。長時間の使用でも、比較的負担が少ない状態で音楽を楽しめます。
耳を塞がないため、周囲の環境音を聞き取りながら音楽鑑賞が可能です。ランニング中や子育て中に音楽を楽しみたいという人には特におすすめです。耳が疲れにくいこと、周囲の音が聞こえることは、安全性を高める観点からも大きなメリットです。
しかし、骨伝導技術は低音域の音質が劣る傾向があり、音漏れも起こりやすいデメリットもあります。状況によって有線のイヤホンと使い分けましょう。さらにイヤホンの使い過ぎによる「イヤホン難聴」や耳の不調には注意が必要です。長時間・大音量で使用しない、適度に休息を取ることを心掛けてください。
骨伝導技術はイヤホン以外にも、補聴器などの幅広い製品に活用されています。耳の健康を守ることは、コミュニケーションの質を向上させ、認知症の予防にも繋がります。そうすると会話が楽しくなり、充実した人生が送れることでしょう。
骨伝導技術の進化は今後も続き、新しい応用分野での活用や僕たちの日常生活への応用も期待されています。例えば、低振動で音が聞きやすくなったり、スマホと連携したアプリやゲームなどです。また、睡眠スピーカーやヘルメットなど、健康や安全にフォーカスした商品も開発されています。
このように骨伝導技術を活用した商品が続々と発表されています。
骨伝導イヤホンは、1~2万円台のラインナップが増え、家電量販店でも販売されるようになりました。スポーツしながら、家事をしながらなどの「ながら聴き」には最適のアイテムです。今までと違った骨伝導リスニングを体験してくださいね!
こちらの記事では、自分用やプレゼント用におすすめのワイヤレスイヤホンを紹介しています。どのイヤホンも装着感が高いイヤホンです。イヤホン選びに迷っている人は参考にしてください。
» 【2024年】おすすめワイヤレスイヤホン10選!
僕はShokz OPENCOMM2を愛用していますが、これは「耳をふさがない」と「ブームマイク」にメリットを感じているからです。イヤホンで聴くのもYouTube動画がメインなので、音質に対するこだわりはほとんどありません。
» マイクつき骨伝導イヤホン OPENCOMM2
このように、重要視するポイントは本当に人それぞれです。自分のライフスタイルや使用シーンに最適なイヤホンを選ぶことで、毎日の生活がより快適で楽しいものになります。各ポイントを参考にしながら、自分にぴったりのイヤホンを見つけてください。
分からないことがあれば、下のコメント欄に書き込んでもらえればお返事します。
個人的な相談であれば、お問い合わせで教えてくださいね!!
骨伝導イヤホンで音楽を聴くと、脳に直接音楽が鳴り響く感覚を味わえます。普通のイヤホンでは味わえない感覚なので、多くの方にこの感覚を味わってほしいです。
今後もあなたのイヤホンライフに役立つ情報を発信するので、次は「ながら聴きガイド」で検索をお願いします。